視覚に障害のある方が歩行訓練を受けるとき、「安全に歩けるようになる」ことは大きな目標ですが、私たちしかさぽが大切にしているのは、それだけではありません。

本当に目指しているのは、**“自分の足で、自分の地図を描けるようになること”**です。

その地図は、もちろん紙に描かれるものではありません。頭の中にある「見えない地図」――メンタルマップです。

たとえば、曲がり角の少し前で聞こえる車の音の変化、足元に感じる段差、信号機の音声。

見えていない空間の中で、五感の情報を組み合わせながら、少しずつ「道のかたち」を自分の中に作っていく。

これが、視覚障害者にとっての“地図を持つ”ということです。

そして、最近その地図づくりをサポートする新しい道具が加わりました。

それが、**音と振動で進行方向を教えてくれるナビゲーションデバイス「あしらせ2」**です。

この機器は、スマートフォンと連動し、「あと50メートルで右折です」などの案内を音声で伝えてくれます。

さらに、靴に取り付けたデバイスが、右折のときは右足、左折のときは左足をバイブレーションで優しく振動させて知らせてくれるのです。

しかさぽでは、実際の歩行訓練にこの「あしらせ2」を取り入れながら、利用者が自分の感覚で“意味のある道”としてルートを体に覚え込ませるサポートを行っています。

これは、どこかに案内されるということではなく、

「この道は、自分が歩ける道だ」と自信を持てるようになるプロセスです。

生まれつき視覚に障害がある方には、“空間を感じる”新しい手がかりとして。

中途で視力を失った方には、“かつての地図を上書きする”サポートとして。

あしらせ2は、それぞれの“見え方の履歴”に寄り添いながら、歩く力を支えてくれる存在になり得ます。

しかさぽの歩行訓練は、誰かの後ろをついていくだけの訓練ではありません。

自分で道をつかみ、自分のペースで進めることを大切にしています。

“道を知る”のではなく、“自分の地図を描く”。

それが、しかさぽが考える「歩く力の育て方」です。

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