―歩行訓練士という選択肢を、診療の先に―
私たち眼科医療に携わる者は、
見えにくさと向き合う患者さんに、日々診断と治療を提供しています。
しかし、視力の改善に限界があるケース――
その先の「生活の支援」まで、十分に橋渡しできているでしょうか。
たとえば白杖の使い方や、安全に外を歩く術を教える専門職、歩行訓練士。
この存在を知らない患者さんも少なくありません。
その理由のひとつに、「人材の絶対的な不足」があります。
2024年の全国調査では、実際に訓練に従事している歩行訓練士は、
わずか189人。
都道府県によっては、ゼロまたは1人のみ。
「訓練を希望しても2年待ち」という声も珍しくありません。
養成機関は日本に2か所のみ。
国家資格でもなく、公的な登録制度も存在しない――
こうした制度的な不備も、人材確保の壁になっています。
しかし、だからこそ。
患者さんの「これからの生活」を支える一歩として、
私たち医療職が“訓練という手段”を伝えることには大きな意味があります。
診断や処方の先にある「日常の不安」に、誰が応えるのか。
医療の出口と、リハビリの入り口を、もっとなめらかにつなぐために。
患者さんの未来に、歩行訓練士という選択肢を。
まずはその存在を、私たちの言葉で紹介するところから始めませんか。


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