真夏の午前、照りつける日差しの中で、盲学校研修科の全盲の若い生徒とともに歩行訓練を行った。グラウンドでは蝉が鳴き、アスファルトの照り返しが容赦ない。だが、私たちの訓練はこの時間にこそ意味がある。

盲学校での歩行指導と、資格を持つ歩行訓練士が行う「歩行訓練」は、似て非なるものだ。前者は教育課程の一環として行われ、教師が担うこともある。一方、私たち歩行訓練士の支援は、視覚障害当事者の“生活の基盤”を築くための正規の専門訓練。個別性に応じて、屋外歩行、交通横断、駅の利用、安全確保など、暮らしに直結する内容を体系的に指導する。

今回の生徒は、かつて盲学校での基本的な歩行指導を受けたものの、実際の生活に即した訓練経験は乏しかった。白杖の持ち方も不安定で、立ち位置の取り方にも癖がある。しかし、私はこう声をかけた。「若いんだし、もう一度基礎からやり直せばいい。」

年齢も若く、体力もある。基礎から見直し、自信を持って歩けるようになれば、可能性は大きく広がる。暑さの中で一歩ずつ前に進むその姿に、歩行訓練の本質があるとあらためて感じた。今の一歩が、確かな未来につながっていく。そんな支援を、私はこれからも続けていきたい。

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