「コピペばかりしている部下は怠慢だ」――そんな思い込みから、ある50歳の課長が部下を異動させてしまったという話があります。しかしその後、課長は深く反省することになりました。
異動させられた部下は、過去の資料をそのまま流用していたわけではありません。コピー&ペーストを基盤に、必要な部分を取捨選択し、更新すべき箇所をきちんと編集していました。それは単なる手抜きではなく、仕事を効率化しつつ精度を保つ合理的な方法だったのです。
一方で課長自身は「資料は一から作るもの」という古い価値観に縛られていました。時代やツールが変わり、効率的に成果を出す働き方が広がっているにもかかわらず、自分の経験則に固執してしまったのです。その結果、部下の持ち味を見抜けず、かえって業務全体の効率を下げてしまいました。
このエピソードは、管理職にとって大切な学びを示しています。表面的に「怠慢」と見える行動も、その裏には知恵や工夫が隠されているかもしれません。私たちは支援の現場でも、当事者の「やりやすい方法」を頭ごなしに否定せず、どうすればより活かせるかを一緒に考える姿勢が求められます。
効率か誠実さか、という二項対立ではありません。効率を工夫することもまた誠実な仕事の一部です。固定観念を手放し、柔軟な視点で人の力を信じること。それが、働きやすさと成果を両立させる第一歩なのではないでしょうか。


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