なぜ私たちの年金は減る一方なのか。その背景には、社会全体が抱える大きな構造的課題があります。少子高齢化が進み、現役世代の数が減る一方で、年金を受け取る高齢者の数は増え続けています。このバランスの崩れこそが、年金財源の絶対的不足を招いているのです。
近年は「年収の壁」撤廃といった政策により、パートや非正規で働く人も社会保険に加入する流れが進んでいます。これは制度を支えるために不可欠な一歩ですが、同時に現役世代の負担は一層重くなります。さらに、高所得者層に対しても保険料負担や給付調整が強化される傾向があり、所得によるツケ回しが進んでいるのも現状です。
こうした中で若い世代ほど「払い損ではないか」という不公平感を募らせています。受給額は減るのに負担は増える、この仕組みでは将来に対する安心感は生まれません。世代間や所得間の格差が広がることは、社会全体の信頼を揺るがす要因にもなりかねません。
いま私たちに必要なのは、目先の給付削減や保険料引き上げといった対症療法ではなく、抜本的な制度改革です。財源をどのように確保するのか、どのように公平に分担するのかを社会全体で議論し直す時期に来ています。年金は単なる老後の生活費ではなく、「安心して生きる権利」を支える仕組みです。その意味を見失わず、持続可能な制度を次の世代へつなげていく必要があります。


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