「障害者ICTサポートセンター事業」という取組みをご存じでしょうか。これは障害のある人、とりわけ視覚や聴覚に障害をもつ方が、パソコンやスマートフォンなどのICT機器を使いこなし、生活の幅を広げられるよう支援する事業です。今では全国47都道府県に整備が進み、点字図書館や福祉団体が相談窓口を担っています。熊本県では昨年、県視覚障がい者福祉協会が拠点を開設し、研修や相談に力を入れ始めました。
一方で、現場の声を聞くと課題も浮かびます。国の補助金はあるものの、自治体ごとの予算化はばらつきが大きく、十分に人員や設備を整えられない地域も少なくありません。愛媛県のように事業費と補助額を明確に公表している自治体もあれば、数字が見えにくいケースもあります。そして福岡県では、盲人協会が受託しているものの、専用の予算枠が乏しく、他の関連事業の予算を充てているのではないかと懸念される状況です。歩行訓練や盲学校の非常勤講師の謝金まで流用され、結果的に子どもたちへの歩行指導の機会が損なわれているのではないか。障害者の自立を支える大切な事業が、財源不足で中途半端になってしまうことは、決してあってはなりません。
「ICTでできること」を広げるはずの事業が、予算の壁に阻まれている現実。地域や国の歩行訓練士がシームレスに連携し、誰もが安心して挑戦できる未来を築くためには、透明で安定した財源が不可欠です。私たち一人ひとりが声をあげ、制度をよりよい形に育てていくことが求められています。


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