盲学校における歩行指導のあり方について、私はかねてより疑問を抱いてきました。このテーマは折に触れて議論を重ねてきたところですが、ある日、盲学校理療科の先生からのご紹介で、高等部研修科の生徒に歩行訓練を行う機会をいただきました。

その生徒は中学部時代に盲学校教諭から歩行指導を受け、その後10年近く単独歩行を続けてきたと聞きました。当然、基礎的な歩行技術は備わっているものと思っていましたが、実際の歩行を拝見して驚きました。歩行は不安定で危うさがあり、この状態で単独歩行の「許可」が出ていたことに強い疑問を抱かざるを得ませんでした。

ご本人やご家族は「盲学校で歩けると評価を受けているから大丈夫」と信じておられ、危機感は感じられませんでした。紹介くださった先生はルートファミリアリゼーションを希望されていましたが、基礎技術が伴わない状態でルートだけ覚えても、転倒や事故のリスクは明らかです。そのため新たな訓練は見送り、基礎からの歩行訓練の必要性をお伝えするにとどめ、ご家族の判断を尊重する形でリリースしました。

この経験を通じて、改めて盲学校での歩行指導の質や方法を問い直す必要性を痛感しました。地域ごとに状況は異なるかもしれませんが、歩行訓練士がどのように関わっているのか、また各地の実践はどう行われているのかを知ることは、大きな意味を持ちます。そこで次々回のアナミ研修会では「九州・沖縄県内の交流」と題し、実践報告を持ち寄る企画「盲学校における歩行訓練士による歩行指導の今」を提案いたしました。互いに学び合いながら、より安全で実効性のある歩行指導を探っていきたいと考えています。

イメージ画像です。

コメントを残す