日々の暮らしの中で、「移動中にふと良いアイデアが浮かんだ」という経験はありませんか?車の運転中や、電車に揺られているときに、ずっと悩んでいたことの答えが突然つながる──。実はこれ、偶然ではありません。脳の仕組みと環境が、私たちの思考をそっと後押ししてくれているのです。

まず、走る景色が流れていく「単調な環境」は、脳の負荷を下げてくれます。忙しい日常で酷使されている前頭前野が少し休まり、“デフォルトモードネットワーク”と呼ばれる内省や創造性を司る領域が活性化します。考えすぎているときには出てこない発想が、ぼんやりしているときにふっと浮かびやすいのはこのためです。

また、車内の走行音や電車のリズムは、いわゆる「中程度のノイズ」として働きます。これは集中力と創造性を絶妙に高める効果があり、静かすぎる場所よりも、少し雑音があるとアイデアが出やすいという研究もあります。

そして、移動中はスマホや作業から強制的に離れるので、思考に“余白”が生まれます。現代人が最も失いがちなこの余白こそが、発想の源泉です。歩行訓練やロービジョン支援の現場でも「余白をつくること」は非常に大切にしています。急がず、詰め込みすぎず、流れるリズムに身を任せる――その時間が、前に進む力を取り戻すきっかけになるのです。

移動時間は、ただの移動ではなく、心と頭を整える“創造のための小さな旅”。もし最近アイデアが枯れていると感じたら、あえて車を運転してみる、少し遠回りして電車に乗ってみるのも良いかもしれません。思考を閉じ込めるのではなく、動かしてみる。そうすると、あなたの中に眠っていた「ひらめきの種」が、きっと顔を出してくれます。

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