かつて「中学生がなりたい職業」といえばYouTuberが定番でした。しかし最近の調査ではその人気が落ち、Z世代の仕事観そのものが変わりつつあります。これは単なる流行の移り変わりではなく、「好きなことで生きていく」というキャッチコピーが、現実にはとても難しいことを若い世代が理解し始めたからだと感じます。
YouTubeは大きな夢を見せてくれました。好きなことを動画にして、多くの人に届け、広告収入を得る――。けれどもその裏側には、終わりのない編集、視聴数のプレッシャー、SNSでの誹謗中傷、撮影環境のストレス、アルゴリズムの変化など、普通の仕事以上に不安定で、心身の消耗が大きい世界があります。
Z世代はこの“実態”を冷静に見ています。「自分にもできるかも」から「ほんの一握りの成功者だけ」という理解へ。夢のステージが、急にリアルな職業イメージに変わった瞬間です。
さらに、TikTokを中心としたショート動画文化の登場も大きな変化をもたらしました。長時間の編集なしで気軽に発信でき、“YouTuber”という特定の肩書にこだわる必要がなくなったのです。発信はもっと自由で、多様で良いという価値観が広がっています。
そして何より、Z世代は“安定と多様性”の両立を求めています。一つの肩書に人生を預けるのではなく、複数のスキルを組み合わせて働く生き方へ。これは福祉の現場でも感じる変化で、「ひとつの役割だけで生きない」という姿勢が確実に広がっています。
YouTuber人気の低下は、若者が夢を諦めたのではなく、“働く”を現実的かつ柔軟に捉え始めたサインかもしれません。
好きで生きる、だけではなく、好きと現実をどう結びつけるか。これからの働き方のヒントが、そこに隠れています。


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